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チャイコフスキー 『眠れる森の美女』(全曲) / A.ジロティ



チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」のピアノ独奏用編曲版。本CDは原曲の繰り返しを一か所割愛しただけで全曲を収録しており、2枚のCDをどちらも79分58秒に収めるように計算してから録音されている。録音に際して、テンポはゲルギエフを参考にしており決して早すぎはしないが、これをバックに踊るのは大変だろう。ナナサコフによる書き加えも数か所あり、スピード感のある演奏になっている。編曲者のアレクサンドル・ジロティは原曲の音を細大漏らさず捉えようとした意図が伺えるが、初演前にチャイコフスキーからの依頼で全編のピアノ版が作成されたことから、おそらくはバレエ練習での用途を意識したのではないか。編曲もジロティの個性を作品にぶつけるよりも、作品をより弾きやすく効果的に響かせようという、ピアニストとしての欲求や工夫の現れが見て取れる。。



【Tchaikovsky Ballet Sleeping Beauty, for solo pianos (2 CDs】
The unique characteristic of Ziloti’s arrangements is that he achieves the desire and innovation as a pianist to make pieces easier to play and therefore resound effectively rather than reflecting his own personality in his works. This is the same for Sleeping Beauty, recorded on this CD. From the story that Ziloti arranged the piano part before the first ballet performance at Tchaikovsky’s request, we can imagine that he may have thought about using this arrangement for ballet practice and that he intended to try to capture all the sounds of the original piece when arranging it. However, Ziloti was perfected as a virtuoso pianist by Liszt and Nikolai Rubinstein therefore, scores arranged by him demands the pianist: a broad, jumping action, high speed scales with chords in thirds, and instantaneous chords that are difficult to play with one hand and although these are simple music, they demand advanced technical skills. This makes us think that he really was a virtuoso to the end and that he just disliked the complexity of the three-hand effect.

           


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Virtual Pianist
マズイ初演を聴かされたあなたは一体どうしたら良いのか。 一般に知られざる作曲家の作品をヘタクソなピアニストが弾いた録音を聴いた時の怒りに似た感情。それは「犯罪」に限り無く近い行為を目撃した者の気分だ。こんな時は人それぞれ、一番良い対処方法を考えるだろう。しかしその中に普通の場合は入らないのが「私がその作品の本当の演奏を皆に聴かせてやる」と心に決めて、握りこぶしを振り上げることだ。そんなことが出来るのはMarc-Andre Hamelin氏と他に数人しかいない。マズイ初演を聴かされたあなたは一体どうしたら良いのか。私は独自の方法で、それらの作品における最初の聴衆になることが出来るようになった。あなたに出来ることが二つある。一つは私と同じく録音すること、もう一つはナナサコフを応援することだ。続きを見る・・・

自分でやるしかないから
そう、私が聴きたいピアノ曲を誰もやってくれないから。音楽に向き合う人生でありたい、というより最初のリスナーになりたい、が当たっているかな。色めき興奮する時間は僅か、残りの大部分は同じことの繰り返しで日々の作業は決して楽しくはなく、むしろ苦痛に近い。CD一枚分で約10ヶ月を要するので、まさに産みの苦しみ。それでもやる。そして迎えるファースト・リスナーの喜び。 よい音楽は美しいピアノから、なのだ。



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